口語訳・立義分

ここに、大きな大きな乗り物があります。


その乗り物とは、いったい何でしょうか?
そして、どんな乗り物でしょうか?

まず、大きな乗り物とは、私たちの心の事です。
本当は、私たちの心の中には、この宇宙のすべてが入っているんです。
ですから、大きなといいます。

すべてを含んだ心、ありのまま真実のすがたが、大きな乗り物そのものなのです。
そして、その心、現実の世界の誕生し消滅する姿が、乗り物そのものであり、すがたであり、働きなのです。


また、大きなという言葉を使う3つの理由があります。
1つ目は、存在が大きいという意味です。
私たちの心は、この宇宙のすべて、そのありのままの姿ですし、それはすべてが平等であり、増えも減りもしないものだからです。

2つ目は、そのすがたが大きいという意味です。
私たちの心には、お母さんの胎内に子どもが宿るように、仏様が宿っています。
ですから、私たちの心には、仏様と同じ限りない功徳がそなわっているのです。

3つ目は、その働きが大きいという意味です。
私たちの心が、この宇宙すべての善いことを生み出しますし、またその結果でもあるからです。

ですから、すべての仏様は、心という乗り物に乗って覚りを開かれました。
また、すべての菩薩も、心という乗り物によって、仏になります。

これが、私たちの心を大きな乗り物と呼ぶ理由です。


あらゆる仏様の深くて広い教えの、私がわかったところを説きました。
その真実そのものである功徳をめぐらして、すべての人々の幸せになりますように。


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今回は、私の大好きな「立義分」を口語訳しました。
大乗仏教のエッセンスと言われる、深い哲学的な内容なのですが、子どもでも読める文章にしたかったからです。

日本人は昔から「心」を中心に思想を持ってきましたが、この文章はその原点の一つだと思います。
平安の昔から、影響を受けた人は数えきれませんし、今読んでも全く古さを感じません。

何か、心に染みる良い文章だなといつも思います。
興味の有る方は、ぜひ原典の『大乗起信論』にお進みください。