第三編 附説 禅宗、並びに浄土宗


序説

 

諸宗の教えと真理は奥深く、窮めがたい。

今はごく僅かを初心者のために記した。

日本に伝わり認められているものは、古来この八宗のみである。

しかし、八宗以外に禅宗と浄土宗が有り、盛んに弘まっている。

 

 

第一節 禅宗

 

禅宗とは、仏法の玄底であり、はなはだ深くすぐれた教えである。

本来無一物であり、もとより煩悩は存在しない。

元来それは菩提である。

達磨がインドより西来して伝えた事は、文字を使わず、直ちに人心を指して仏性を見て成仏する事である。

他宗のような万法、法義とは異なり、多くの論を用いない。

 

インドの二十八祖は心に依って心を伝えた。

そして第二十八祖の達磨大師は梁の時代にそれを中国へ伝えた。

以来、六祖が順に相承した。

しかし五祖(弘忍)の下で南北の二宗がはじめて分かれた。

六祖(慧能)のころ南宋の末に五家に分かれた。

道璿律師は北宋の禅を受け、これを日本に伝えた。

また、伝教大師は大唐国から禅宗を伝え、仏心宗と呼んだ。

最近の高僧もまた宋朝からこれを伝えている。

そして、日本の各地で盛んに弘まっている。

 

 

第二節 浄土宗

 

浄土宗の教えは日本に広く行われている。

およそ、浄土教の教えは、煩悩に縛られた凡夫が浄土を欣楽し、修めた業によって浄土に往生するものである。

西方浄土はこの世界に縁が深い。

念仏の修行は機根の劣った人にも易しい。

浄土に生まれてから成仏に至る。

 

広く言うなら、一切の諸行を浄土往生へ廻向する事を浄土門と言い、万行を修行してこの世界で成仏する事を聖道門と言う。

諸教諸宗はみな聖道門であり、往生を欣求する事が浄土門である。

その源流は馬鳴の『大乗起信論』にあり、ついで龍樹の『十住毘婆沙論』にある。

天親菩薩(世親)、菩提留支、曇鸞、道綽、善導、懐感等を経て日本へ伝わった。

それぞれが論書を書き、競って広めた。

日本では近代より特に浄土宗が盛んである。

 

 

総結

 

もし、この二宗を加えると十宗となる。

しかし、通常は八宗である。

先に並べた諸宗の順序は浅深の順ではない。

ただ、説明の都合で並べただけである。

どのように並べることもできるので、今はこのように並べる。

 

人として聖教を受ける事、出会うことは難しい。

しかし、たまたま巡り会うことができた。

どうして黙って何もしない事ができるだろうか。

そこで、理解したところを挙げて、将来の縁を結ぶ。

この功徳も朽ちなければ、必ず菩提を証するだろう。

 

 

跋文

文永5年(1268)戊辰正月29日、予州(伊予・愛媛)円明寺西谷にてこれを記す。

私は一宗の教義においても、まだ規範とされるものではない。

他宗の教観については、1つも知る所が無い。

ただ、名称を挙げて、僅かに知っている事を書いた。

誤りも極めて多い。

正しい意義には全く欠ける。

多く、識見の有る人は、これを正していただきたい。

 

華厳宗沙門凝然生年二十九

 

平成二十六年五月三日翻訳を終える。

真言宗沙門某甲